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深谷徳一さん

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前編「出発、そして、感動の旅」

なぜ放浪しようと思ったのですか。
 二年の夏ごろから海外に行きたいなあと思っていました。それは語学を身に付けるためではありません。長年日本にいて身についた習慣、伝統、常識など、固定観念化したものを打破するためにです。何となくうそっぽいと思っていても、なかなか自分の中で崩すことのできなかったものを、雑多な空間に触れることで崩したかったんです。また、大学を出てしまえば放浪などはできなくなることもあり、今がタイムリミットだと思いました。

事前にどのような準備をしましたか。
 実はそれまで海外に行ったことがなかったので、二年の終わりの春休みに一週間程度、予備的に北京へ行きました。
 語学については、第二外国語で中国語をとっていただけです。なんとかなるや、と思っていました。
 あと一応、海外旅行保険に入って予防接種を受けました。
 また、旅行計画はほとんど立てませんでした。出発日だけ決めただけであとは行き当たりばったりで行動しました。宿は「地球の歩き方」を参考にすることもありましたが、むこうに行ってみて安そうな所に入ったり、出くわした日本人旅行客から良い所を聞いて決めることが多かったです。
 資金ですが、バイトでためた50万円をカードとトラベラーズ・チェックにして持っていきました。
 期間ですが、復学手続きを2月中にする必要があったので2月までと思っていたのですが、ちょうどぴったり位でした

放浪中の危険なエピソードを教えてください。
 チベットからネパールに行くときのことです。チベットには電車もなく、バスも週に一本あるかないかなので、たいがいは旅行会社の用意した車を使いますが、その車に乗ったとき、同乗者が高山病でどんどん倒れて先に進めなくなりました。 
私は時間がもったいないと思い、郵便の車をヒッチハイクしていくことにしました。しかし検問にあい、残り30kmのところで降ろされてしまいました。夕方だったのですが、歩いてネパールまで行くことにしました。
 崖のような山道を歩いていると、突然山犬が現れました。やばいと思って犬に対抗して「ウー」といいつつ、犬をにらみつけながら離れていき、何とかして切り抜けましたが、あの時は死ぬかと思いました。

では感動するエピソードはありましたか。
 ネパールの物乞いの子ども達と仲良くなったときのことです。その子達に何かをあげていたわけでもないのに、私に食べ物を分けてくれました。それだけでも驚くべきことなのに、それを分けるときに「お前は一番大きいから一番たくさん食べろ」と言って、私に一番多くくれたんです。日々の食べ物に困っているような子ども達が平等以上に食べ物を分けてくれるということに大変感動するとともに、文化・宗教・習慣の違いについてまざまざと実感させられました。
 また、インドでは楽器を持ち歩くといいですよ。私はインドでポピュラーな、太鼓のような楽器と笛を持ち歩きました。それを持って電車などにのると、現地の人が「俺にもたたかせろ」とか「おまえ吹いてみろ」とか言って近づいてくるんですね。音楽を通してコミュニケーションができ、会話のきっかけにもなって良かったです。

―後編「旅の末に見えたもの」へ続く―

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