第3回 絆
『河原にできた中世の町−へんれきする人びとの集まるところ−』(文・網野善彦、絵・司修)は産経児童文化出版文化賞美術賞を受賞した。8年間の歳月をかけて作り上げた作品である。第3回は、この本を作り上げる過程で生まれた「絆」を今回はお届けします。
契機
ある時、自宅付近の川岸を歩いていた。ふとある光景が目に入った。
「禅宗の寺の門が道のほうではなく、川の土手のほうを向いていたんですよ」
そのとき、目の前に近世のの光景が広がった。高瀬船が盛んに往来し、北関東の農産物の荷卸をしている。はたまた、漁師たちが網を打っている。そのとき思った。
「歴史は教科書の中にあるのではなく、自分のすぐ傍にある。それを絵本で表現しよう」
出会い
女、子ども、老人、被差別民、さまざまな職業の人たち――つまり歴史教科書に出てくる有名な人物ではない、普通の人たちの姿を山田さんは絵本の中に再現したいと思った。そんな夢を膨らませているときに紹介されたのが網野善彦さんであった。
「網野さんは、日本が瑞穂の国としてずっと米作を中心とした農業国家であったという定説に真っ向から反対して、ちょうど歴史研究の世界に大旋風を巻き起こそうとするところでしたね。研究者として油が乗り切っていました。そんな大先生に、昔の情景が目の前に浮かび上がってくるような絵本を作りたいから相談にのってください、と会いに行ったわけです」
絵は司修さんに担当してもらうことになった。現実と幻想がせめぎあう力強い絵を描いて、もっとも注目されている画家の一人だった。しかし、網野さんはなかなか承諾してくれない。理由があった。農民一揆の紙芝居を作ったことがあり、子ども向けの本を作る難しさを知っていた。しょっちゅう会いながら、オーケーしてくれるまで3年の歳月がかかった。
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