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第2回 編集の仕事(2)
編集者のつらさ・たのしさ

去年の一月に退職されるまで30年以上、岩波書店に勤めた山田さん。「本を作りあげるときの緊張感」「「いい著者とめぐり合うこと」と、そのやりがいを挙げる。今回は本の製作をめぐっての様々な人間模様に迫ってみました。


著者と出会う

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「普段から、いろんな人の著作を流し読みにしてもともかく読んでおいて、こういうテーマではこういう人といったリストを頭の中に作っておく必要があります。おおざっぱに考えて、第三者に紹介してもらえる著者の数と、自分のリストからあげるのと、半々くらいだったでしょうかね。その中から、自分が作りたいと思ったテーマに合う著者を見つけるわけです。ぴったりの著者と出会えた時は本当に嬉しいですね」


信頼関係を築く

どんな仕事をするにしても信頼関係を作らないといけない。信頼関係が無いといい文章を書いてくれない訳である。その駆け引きは、著作を依頼するときから始まる。

「そのためには、古いメディアだけど、手紙は強いと思います。編集者の手紙って、一種のラブレターかな。それぐらい惚れなきゃいい仕事はできないね。この企画をこんな風に育てて行きたい、こういうことを読者に伝えたい、そのために力を貸していただきたい。それができるのは他ではなくあなたしかいない、という思いを伝えないとね。手紙でその思いが伝わると信頼関係が築ける」

本を作る楽しみ

「『本ができる』こと自体よりも、『本を作る過程』がとても楽しいんですよね。本が出来上がっていく過程で、著者と自分とで、ああした方がいい、こうした方がいいと何度も何度も話し合うんです。そうしていくうちに、本には入りきらない著者の思想や感覚もぜんぶ体験できますから」

編集者の辛さ

しかし、逆に著者と向かい合うほど編集する段階に至ると辛い。信頼関係を構築させた作品への真剣な思いが逆に足かせとなる。その一例を示すのが『幻の朱い実』を出版する時の、著者石井桃子さんとのやりとりであった。『くまのプーさん』や『トム・ソーヤーの冒険』の訳者と言えばご存知の方もいるのではないか?

「児童文学者の石井桃子さんは、80歳になって初めて、大人向けの小説を書きました。20代から心の中に暖めておいたことを80歳になって書いた。8年をかけて、原稿は2000枚。でも編集者側としては、それを1600枚にしてほしい。小説は本人の分身なんです。しかも60年かけて産み落としたものです。削りようがないわけですよ。著者の思いをすべて受け入れながら、削らなければいけないという矛盾に悩みましたね。胃がいたくて、胃がいたくて」

結果としては読売文学賞をとり、時代を生き残る本に仕上がった。それはお互いの真摯な姿勢が形となって表われた結果なのかもしれない。その製作過程の想い出を誇らしげに振り返る山田さんの姿が印象的だった。

次回は、一つの本が出来上がるその過程を『河原に見える中世の街』(文・網野善彦、絵・司修)を題材として、取材してきました。


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