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輝く人05

野堀敬香子さん 名前
『ブラッスリー・ラ・リラ 風土庵』 オーナー
         野堀敬香子さん
生年
     1945年
趣味
     読書
人生の中でのターニングポイント

   結婚・出産・店のオープン


―20年前からレストランを経営されているそうですが、きっかけは何だったの   
でしょうか?

 姉が店を作った直後に交通事故に遭ってしまいました。きれいな店で人手に渡すのは忍びなかったので、「ほんの2,3年でも」と思い、今の店を始めました。出産直後の出来事だったので、商売にしようという気もそれほどなかったのですが、いつの間にか20年経っていましたね。
 もともと料理は好きでした。出版社に勤めていた頃も食通の人に担当を割り当てられることが多かったほど。「作るのが好きだから。」そんな単純な理由で店舗を大きくしたり増やしたりすることも考えずにひたすら作り続けてきました。

―なぜ地元の野菜にこだわるようになったのですか?

 地元産野菜にこだわるようになったのは店を始めるよりももっと昔の話です。私は昔から料理が好きでしたが、当時は「野菜はどこで買っても、どこで食べても同じもの」と思っていました。だけれど姑が茹でてくれた採り立てのインゲンを食べたとき、信じられないくらい甘かった!
 野菜ってこんなにも違うものなんだ、と驚きでした。「どこどこの食材だから、あの料理店で作られたから何千円もする」というのではなく、もっと当たり前のものでもこんなに美味しいものがあるんだ、と気付かされたんです。結婚してこういう田舎に住むのも悪くないかな、と考えるようになりました。それくらい鮮烈な体験でしたね。
 店でこだわり始めたのは10年ほど前から。世間では最近になってようやく食に対して危機感が出てきたけれど、私はもっと昔から気付いていて「こんなはずじゃないのに」とずっと思っていました。そう意識し始めて10年、徹底して地元のものを使うようにしよう、ごまかしのないものにしよう、塩や米もできる限りのことをしたいと思っています。

―野菜はご自身で作っていらっしゃるのですか?

 姑が作ってくれるものもあれば、近所の方が作ってくれるものもあります。でもかなりの野菜は私の店で作っています。だから畑にあるものでメニューが決まるんですよ。「銚子になになにの魚が入ったから」といって魚を選ぶように、野菜だって「これが採れたから」と選ぶのは当たり前のこと。だから年間通して同じメニューはあまりないんです。

―つくば産の食材の良さとは何ですか?

 大量に採れて値段が安い。あとはのびやかなのかなぁ、野菜にしろ売り方にしろ。成長もいいし、安心して大量生産できるところではないでしょうか。天候に左右されることも少ないし、いつでも供給できます。つくばは風と土と空気が本当にきれいなところ。これだけで美味しい野菜は育つと思いますよ。

―やはり食材への思い入れが強いんですね。

 今年お味噌を発酵させるところから作ったのですが、原価が600円でした。でもスーパーの特売なんかでは198円で買える。おかしいと思いませんか?
 醤油だって198円、豆腐だって60円くらいで買えますよね。でも大豆は虫の大好物で、すぐに食べられてしまいます。私も消毒をほとんどせずにエンドウ豆を作っているのですが、あまりたくさんは収穫できないんです。そうやってどうにか実った大豆を使って600円かかったものを、 どうしてスーパーでは198円で買えるのか……。答えは簡単、農薬をたっぷりかけているからなんです。
 今は品質表示が厳しくなってきたけれど、見る目を養わなければ本質は見抜けません。遺伝子組み換えや無農薬かどうかは自分で責任を持って確かめなければいけないと思う。そういう意識が今は乏しいのではないかと思います。

―オーガニックや無農薬が最近はやっていますが、
  それに便乗して「まがいもの」も出回るようになりましたよね。
  そういったものを見抜くということですか?

 選ぶのは自分。まがいものを掴まされたからといって「あんなに高いお金を出したのに」と不平を言うのではなく、「自分の見る目がなかった」と思わないと。「基準を作れ」とよく言うけれど、人任せにしていては駄目なんです。自分で野菜を作っていると、例えば見ただけで日本産なのか中国産なのか、といったことがわかるんですよ。昔はその見る目を家庭が養っていました。自分で自分が食べるものを作っていましたからね。けれど今は何でも人任せですよね。
 あんなに美味しいものがすぐ近くの直売所にあるのに、みんなスーパーに行ってしまうんです。きっと日常に溢れすぎていてわからないんでしょうね。東京などでは有名デパートで干からびたような野菜が高級品として売られています。それらの野菜は茨城、群馬、埼玉で採れたものなんですよ。ここでは新鮮な野菜が、しかも安価で買えます。なぜわざわざないもの、高いものを買ってきてごちそう扱いするんでしょうか。ごちそうはすぐ近くにこんなにも転がっているんです。オマール海老なんてなくてもジャガイモだけでも美味しいグラタンができるし、野菜だけ焼いても美味しい。そういう野菜がここにはごろごろあるんです。
 ここで農業をしている人は、本当に美味しいものを作っているのに、みんなスーパーに行って輸入物を買うから売れない、と嘆いています。中国やアメリカが日本人のために本当に美味しくて健康なものを作ってくれると思いますか? そんなことはないでしょう。みんなそれに早く気付くべきなんです。

―なかなかそういったことに気付くチャンスがないのではないかと思います。
  野堀さんはどのようにして気付かれたのでしょうか。

 やはり料理を作っているからでしょう。相手が子どもだろうが、家族だろうが、お客様だろうがいいものを食べさせたい、最良のものを食べてもらいたい。食べさせようという意識がなかったら、探そうという意識も生まれません。「食べさせたい」というホスピタリティー(もてなしの心)が私の根幹にあるのだと思います。「食べさせたい」と思ったとき、愛情が後ろにないはずがないでしょう?
 例えばお母さんが赤ん坊にお乳を飲ませようと思うのと同じこと。私はどんなに忙しくても、子どもに出来合いの料理を食べさせたのは数えるほどしかありません。そういう執念のようなものがないと本質は見抜けないのではないでしょうか。

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