スタートの合図と同時に、「万里の長城」と題されたそのロボットは競技フィールドのど真ん中を伸びるように横断した。
フィールドの中には、ゴールとなるポールが立っており、その中にボールを入れてその得点を競い合う競技である。
彼らのロボットは、最高得点が得られる真ん中のポールを包み込むように、フィールドの端から端まで壁を作ったのだ。(写真 右)
壁を作ったことで、相手チームのロボットは、ボールを円筒のポールにゴールできなくなった。
その瞬間、筑波大学のロボットの一回戦突破と、アイディア賞受賞が決まった。
「僕達のロボットはアイディア勝負!」
勝利の秘訣は”チャレンジャー精神”と”情熱”
樫木拓哉さんは、小峯圭太さんら7名と共に、昨年4月につくばロボットサークルを立ち上げた。
そして今年、サークルの仲間と共に出場したNHKのロボットコンテストで、見事アイディア賞を獲得した。
「1回戦のロボットの動きは完璧でした。勝ったときには、もう興奮してしまって、頭に血がのぼっていました。嬉しかったです よ、本当に。
辛かったときのことなんて全てふっとんでしまったくらいです。挑戦してみてよかったなって思いました」
と嬉しそうに話すのはコンテストのチームリーダーの小峯さん。
サークルの部長である樫木さんは、
「技術力が足りない分、今の自分たちの力を最大限に生かせるアイディアで勝負しようと思ったんです。
それが評価されたのはとても嬉しいですね。勝負には運もありますし、自分たちとしては、よくやった、という気持ちでいっぱいです」 と、淡々と語る。
サークルの中でアイディアマンとして活躍する小峯さんは、「僕達は"おもしろさ"重視なんです。
こんなアイディアは誰も思いつかないだろう、と思いながら、みんなでアイディアを出し合い、
設計書を書くのは本当におもしろかった。うまくいかないかもしれないと思ったこともありましたが、
"チャレンジャー精神"と"情熱"を持って取り組めばきっとうまくいくと信じていました。
なにしろ"情熱"が売りのチームなので……(笑)」そう言ってにこにこ笑う。
2人は自主的に、毎日毎日ロボット作りに励んだ。
「もちろん肉体的には辛いときもありましたよ。
でも、作っているロボットがうまく動かないことが辛いと思ったことはなかったですね。
だってそこが工夫のしどころでしょう?」肉体的には大変だったと言いながらも、
にこやかに話す樫木さんの笑顔はとても印象的だ。
後輩たちに対してはあくまでサポートのみ。 アイディアの押し付けだけはしたくないんです。
このつくばロボットサークルでは、小峯さんを中心にたくさんのアイディアを出し合い、
樫木さんを中心にアイディアを形にしていく。
情熱的でポジティブな小峯さんと、物静かで、自分の作業を地道に進めていくのが好きだと言う樫木さんとは、
一見対照的だが、彼らのバランスは絶妙だ。そんな彼らは声をそろえて「自分たちのアイディアは後輩には絶対教えない」と言う。
「もちろん、後輩たちがロボコンに出場したいと言い出せば、サポートはしますよ。
でも、僕たちのアイディアを教えてしまったら、それは僕たちの意見を押し付けることになってしまうでしょう?
それでは後輩たちはアイディアを考える楽しさを味わえなくなってしまう。彼らにも自分たちと同じように
自由にのびのび意見を出し合い、オリジナリティーあふれるロボットを作ってもらいたい。
だから、自分たちのアイディアは教えないようにしているんです」。
サポートはしたいけれど、後輩たちの自主性を何よりも大切にしたいと考えている二人の優しさを、
強く感じることができた。
「誰にも負けないのは"情熱"」。
そう言い切って臨んだNHKロボットコンテストで、彼らは
自分たちに足りないものが技術だったということを自覚した。
と同時に、「ゴールは思っているほど遠くなかった」という確信を得た。
小さい頃からやりたいと思っていたことが実現できたということは、彼らの強い自信に繋がったことだろう。
これからの樫木拓哉、小峯圭太と、彼らの立ち上げたつくばロボットサークルの発展を願ってやまない。
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