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 仲村さんと三上さんは、二人とも演劇を始めたのは大学入学後です。入学当初はサッカーや音楽、美術系のサークルを掛け持ちしようと考えていた仲村さんが、演劇の世界に入るきっかけとなったのは、新歓の際たまたま「E.S.S. Musical Section」の飲み会に参加した事。その後、先輩達の人柄と勧誘もあって、最初は戸惑いながらも演劇を始めました。

仲村さん  仲村さんにとって演劇の魅力とは、と言う問に対して、「身体めいっぱいつかって、表現をし、空間に意味を与えるということに対して、様々な人たちのアイデアをかたちにしながらつくりあげていくこと」と答えています。さらに舞台美術もつくる仲村さんは「舞台美術のような大きなスケールものづくりの楽しさ」を感じています。

 二人が出会ったのは「E.S.S. Musical Section」。ただ、二人が最初に意気投合したのは演劇に関してではなく、林業の話題についてだそうで。元々、社会工学類で都市の環境問題に興味のあった仲村さんと、生物資源学類であった三上さんは学群1年当時、演劇の傍ら環境問題に関する勉強会にもとりくんでいたとか。こうした興味関心に対してつきつめていく姿勢は、「SINKI」の原点にもなっているように取材者は感じました。特に仲村さんの活動は幅広く、大学で都市計画を学びながら、実際にまちのディスプレイや古民家再生、Green House Cafe(賑わい演出の仮設カフェ)の設置、NPOでの活動への参加と様々です。その中で、地域の中で何が出来るか見えてきた事が、次の段落以降で述べる「SINKI」立ち上げにおいて大きな意味をもっています。

三上さん  一方の三上さんが演劇を始めたきっかけには、何か表現することがしたいと言う思いと、好きな歌もできるという事から、演技も歌もできるミュージカルを選びました。三上さんにとっての、演劇の魅力とは「多様な表現の可能性」といいます。「歌の表現や、身体のつかいかた、さらには照明の加減等で自分達が伝えたいことを表現できる」といった可能性の幅の広さが魅力です。

 「SINKI」の立ち上げを考えたのは、昨年(’04年度)の7月。普通演劇サークルでは卒業公演を行うのが一般的ですが、当時学類4年生であった二人は、院試や卒論の関係があり、共に発起人となってくれた同期の仲間たちも同じ状況であったこと、さらに「RENT」を公演するには準備期間が短かった事から、卒業公演を見送って、大学院1年生である今年(’05年度)に公演を行う事を決めました。そこで、偶然にも「大学の外部でやろう」とそれぞれが別々に考えていた事がわかって、このプロジェクトは走り始めます。同じ年の12月末には中心メンバーが集まり、翌年3月に実際に公演に向けた稽古やスタッフワークがスタートしました。メンバーは三上さんが、様々な人に分け隔て無く声を掛け、仲村さんが一本釣り的に、コアになってくれそうな人に声をかけていきました。結果、演劇経験者はもちろん、演劇以外の専門性ももった学生が集まり自分の得意分野で公演の成功を目指して活躍しています。産声を上げたばかりの団体にありがちな、右も左もわからないけど情熱だけで突っ走ると言うような事はなく、それぞれが高いレベルで劇団に貢献しています。

練習風景_1

 それぞれが演劇以外の専門性を持っている事は、「SINKI」にとって大きな意味を持っています。と言うのは、つくばの学生の演劇活動に“新しい風”をおくりたいと言う思いを2人が持っているから。あえて遠慮せずにいえばと2人が語ってくれたのは次の通りです。演劇を知らない人に対しては、演劇を知るきっかけになればという思い。演劇をしっている人は、今までとは異なった表現方法や、異なった作り方を知ることで自分の殻を打破したり,偏った見方をほぐすことにつながればという思い。これらが2人の考える“新しい風”です。今回の取材も、“新しい風”をつくることの一環だと仲村さんが話してくれました。サークルの枠にとらわれず活動を行うことで“新しい風”が生まれるのです。 このように「RENT」の公演で伝えたいことと、「SINKI」の存在そのものが、学生に刺激を与えるきっかけになる事が、立ち上げにあたっての大きな動機です。こうした熱い思いと同時に、劇に込める思いはシンプルです。「(『RENT』を観て)気持ちよかったなぁ、と思って帰って欲しい」と言う演出の三上さんの一言。続けて「当然、魅せたいという思いはある、けれどもそれは完璧でなくて荒削りでも、自分達のできるかぎりを精一杯表現したい」と話してくれました。

 学外で公演するにあたって、仲村さん三上さんはじめ、大学上級生が多く関わっている活動だからこそ、それぞれの幅広い経験がいきています。普段学内で公演する事を主としている団体ではなかなか外で、という意識は芽生えません。それは、リスクを伴うから。それでも学外にこだわったのは、メンバーの強い思いと、それぞれの経験があったからです。また、今回「RENT」の公演にあたって、プレ公演では 練習風景_2 「-つくばエクスプレス開業記念-」イベントとしての助成金を得ています。もちろん、助成金をもらって公演するという事自体も、つくばの学生の演劇活動ではまれな試みです。様々な新たな挑戦には当然産みの苦しみが伴うものですが、それもまた“新しい風”であり、学内では得られにくい貴重な体験なのです。

 「SINKI」という名前は、今回のプロジェクトが1回勝負のものであり、蜃気楼のように消えてしまうもの(だがそこにはしっかり見えるもの)。そして「新規なもの」等に由来しています。この公演が終われば「SINKI」は散開します。しかし、このプロジェクトに関わった人たちから、さらに“新しい風”が生まれれば、演劇に限らず、つくばと言う街や私たちの学生生活がもっと面白いものになるのでは、そう取材者である私は感じました。


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